10月となりましたが、日本にはもう「四季」は無く「二季」しかないのではという巷の話。 それはさておき、10月には私が知らないうちにすっかり根付いてしまった行事があります。31日の「ハロウィン」なんて行事は私が幼い時はまずありませんでしたね。 中学生の時に「英語」の教科書を通じて欧米に「ハロウィン」なる行事があることを知ったレベルです。挿絵を見て折紙の骸骨を飾るとか変わった趣向だななんて思っていました。

しかし、ハロウィンの「あるキャラ」を見ると思い出す落語があります。
「秋刀魚火事」(さんまかじ)
長屋の連中が揃って、大家の家にやって来て、知恵を授けて欲しいという。大家と言えば親も同然だから一緒に考えようと言うことになった。裏の地主の吝い屋が余りにもやり方が汚いので、愚痴を聞いて欲しいと泣きついてきた。

潮干狩りに行ったら、日本中の蛤が捕れたと思うほど捕れて、いろいろ料理して楽しんだが、殻まで食べられないので、路地に捨てたら番頭が怒鳴り込んで来て「踏めば危ないし、当家で始末してあげるから裏口に持って来い」と言うので、綺麗に片付けて持って行った。 その年の冬にヒビ・アカギレの薬を売り出した。その容器が蛤の殻で、長屋の連中が買ってきたら、何処かで見たことがあると考えたら、集めさせた蛤の殻だった。おどしすかし持って来させた殻で儲けるとはひどい。

それはまだ良いとして、長屋の子供達が塀に落書きをしたら、番頭が出てきて、塀に書いてはいけないから庭にある石に書きなさいと言ったが、その石は真っ白で、蝋石では絵が見えない。家に帰って炭を持ってくれば良く見えると子供をそそのかし、炭を持ってこさせた。番頭が出てきて、「御用があるから外で遊んで。炭を持っていると着物を汚すので、この箱に入れなさい」と集めた。

子供は正直だから外で遊んで、飽きたから庭に戻ると炭が無い。各自家から、また炭を持ち出して遊んでいると、番頭が出てきて、「御用がある」からと炭を取り上げた。2,3日経つと長屋には炭が無くなり、吝い屋には炭が3俵ばかり蔵に入れた。
それは良いとして、3~4日前に番頭が来て、家のお嬢さんが前の空き地に、珊瑚の五分玉のカンザシを落とした。拾ってくれた方には、莫大なお礼をしたい。その莫大なお礼を求めて長屋の連中が集まった。雑草が生い茂っているので、草刈りをしてからだと綺麗にしたが、カンザシは見付からなかった。

今朝吝い屋の話を聞いてしまったら、番頭を褒めている、「空き地の草刈りをするのには人手が掛かる。その費用を考えていたら、お前の働きで、ただで草が無くなった」。クヤシイじゃないですか。
それで、留さんが考えたのですが、唐茄子のお化けを考えた。唐茄子をくり抜いて、目鼻を付けて、中にロウソクを入れて、竿の先に吊して、吝い屋が夜中に、手水場に起きるのが分かっているからその時に、鼻先に吊して脅かそうとした。吝い屋はそれを見て、手にとって眺めていたが、ヒモを外して部屋の中に入ってしまった。

翌朝番頭が来て、昨夜の礼をしていった。癪に障るから何か無いかと大家の所に来たという。
あすこの一番怖がるのは火事だろうな。またまた留さんは「油の詰まった3番蔵に松明を付けて、投げ込んだら、驚くでしょうね」。それは驚くけれど警察沙汰になってマズい。留さんは考えない方がイイ。では夜中に「火事だ、火事だ」と怒鳴ったら。それも警察のご厄介になる。
そこで、大家が考えたのは、長屋18軒全部が七輪を持ち出して、3匹ずつ一斉に秋刀魚を焼く。頃合いを見計らって、焼けばスゴイ煙になる。その時、声の大きな熊さんが怒鳴る「小さな声で、魚竹では間に合わない。大声で河岸だ、河岸だ」と怒鳴れば河岸が火事に聞こえる。間違えるのは先方のかって。そのどさくさに皿などを壊せば、手を叩いて喜ぶと計画が決まった。時間は大切で、暖簾を閉まって、食事の準備をしているのを狙う。長屋18軒七輪を並べて焼き始めた。

こちらは吝い屋さん、夕食になってもおかずが無い。せめて、沢庵でも出して下さいと懇願していた。その時に黒い煙が入ってきた。合わせて「河岸だ、河岸だ」と怒鳴る声が聞こえた。油屋さんですからビックリして火事と聞き違えた。蔵の目塗りに走る者、火事に対処する者、大騒動になったが、中に賢いのがいて、裏を見ると、秋刀魚を焼いているのを見つけた。皆を押し沈めたら、旦那が半信半疑で裏を見ると長屋中が七輪を並べて、もうもうと煙を立てて秋刀魚を焼いていた。
「思いだしたよ。石町さんでご馳走になったが、あれ以来だ。美味くて、食べたいと思っていた。サアサアぼやぼやしないで、早くご飯をついで」、「旦那、今沢庵を・・・」、「とんでもない。この匂いを嗅いで、おかずにして食べてしまおう。」

作者は初代・林家正楽師です。 落語から紙切りに転じた人でダグラス・マッカーサー元帥、スカルノ大統領、昭和天皇の前で紙切りを見せて好評得たという実績をも持つ人だったようですが、落語の創作では「さんま火事」の他、五代目・古今亭今輔師が得意にした「峠の茶屋」、二代目・三遊亭円歌師の「壺」も書いているようです。
「さんま火事」は三代目・桂三木助師が得意にしてましたが、その後は九代目・入船亭扇橋師も得意にし現代も多くの落語家さんによって演じられているようですね。九代目・扇橋師はサゲを「長屋の住人があれだけ秋刀魚を焼く煙を立てているのに『しわいや』の面々が騒いでいる様子がないので、覗いてみたら、『しわいや』の連中は『大根おろし』で飯を食っていた。」としてました。何か遠回しで奥ゆかしいサゲですね。

で、なぜ「ハロウィンのあるキャラ」で「さんま火事」を思い出すかというと「唐茄子のお化け」で相手を嚇かそうとして失敗する件なのですね。

「ハロウィン」でまず思い浮かぶキャラというと「唐茄子(『パンプキン』と言った方がらしいかな?)」に目鼻口を彫ったこれですね。

三代目・三木助師の生前の録音をラジオで聴いた時、「ハロウィン」が行事として日本に定着したのはこの二十年ぐらいの間だと思うけど、昭和三十年代に他界した師はこの行事に関してある程度知っていたのかな?なんて考えてしまいました。三代目・三木助師は粋でいなせな江戸前の語り口でありながら、ハイカラなクスグリも好んだと聞きますからね。 作者が初代正楽師であると知った時もマッカ―サ―元帥のお座敷に招ばれるくらいだから、米国人とも交流があって「ハロウィン」についてもある程度知っていたのかな?とも考えてしまいました。 まあ、何かに目鼻口を彫るなんて趣向は「ハロウィン」だけじゃないかも知れませんがね。
10月末になると下記の服装をしている幼い女の子を日本でも見かけるようになりましたけどね。

独特の可愛らしさもありますからねオジサンは狼男になっちゃいそう。←おまわりさ~ん!!
まあ、子供さんが楽しむためだけのものであって大人が酔っぱらってバ〇やらかす場であってほしくないですな。数人がかりで軽自動車をひっくり返すようなね。
ニュースで見たのですが
東京・渋谷区の長谷部健区長が、今月末に迫ったハロウィン期間の渋谷駅周辺の対策を発表しました。 去年に続きハチ公像の周辺を封鎖し、お酒の販売を自粛するよう要請します。 今年は新たに、渋谷駅周辺で電動キックボード「LUUP」を利用できなくするよう、協力を求めたということです。 区は、路上飲酒や通行妨害などを「迷惑ハロウィーン」と呼ぶことを決め、マナーを守ってハロウィンを楽しむ人々と区分けしていきたい考えです。
「迷惑ハロウィーン」をやらかす奴は下のようなオバケの餌食にするか

七輪で焼いてしまいたいですな。


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